
不動産売却の特例は組み合わせによって併用できる
不動産売却では、売却によって利益が出たときの税負担を抑えるため、さまざまな特例が用意されています。ただし、すべての特例を自由に併用できるわけではありません。対象となる不動産の種類や所有期間、売却後に新しい住宅を購入するかどうかなどによって、利用できる制度が変わります。
代表的なのが、マイホームを売却した際に譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる「3,000万円の特別控除」です。この特例は所有期間にかかわらず、一定の要件を満たした居住用財産の売却で利用できます。また、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームで一定の要件を満たす場合には、「軽減税率の特例」も検討できます。
この3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は、条件を満たせば併用可能です。まず譲渡所得から3,000万円までを控除し、それでも課税対象となる長期譲渡所得が残る場合に、軽減税率を適用できるケースがあります。売却益が大きい場合ほど影響が出やすいため、所有期間を確認したうえで両方の要件をチェックすることが大切です。
併用できない代表的な特例も知っておこう
不動産売却の特例を考えるときは、併用できる制度だけでなく、同時に使えない制度を知っておくことも重要です。たとえば「特定の居住用財産の買換えの特例」は、一定の要件を満たしてマイホームを買い換えた場合に、売却益への課税を将来へ繰り延べる制度です。これは売却益そのものをなくす制度ではなく、買い換えた住宅を将来売却した際などに課税が生じる可能性があります。
この買換えの特例を利用する場合、原則として3,000万円の特別控除や軽減税率の特例を同じ売却について重ねて適用することはできません。そのため、売却益や新居の購入価格、今後の住み替え予定などを踏まえ、どの制度を選ぶと有利か比較する必要があります。
さらに注意したいのが住宅ローン控除との関係です。新居を住宅ローンで購入する場合でも、入居した年やその前後の一定期間に3,000万円の特別控除、買換え・交換などの譲渡所得の特例を使うと、住宅ローン控除を受けられないことがあります。一方、一定の譲渡損失に関する損益通算・繰越控除の特例では、住宅ローン控除と併用できる場合があります。「売却時の節税だけ」で判断せず、新居側の控除まで含めて確認しましょう。
特例を選ぶ前に売却益と将来の税負担を比較しよう
不動産売却でどの特例を使うか決める際は、まず譲渡所得を計算することが基本です。譲渡所得は、売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引いて求めます。購入時の契約書や仲介手数料、売却時にかかった費用の資料をそろえておくと、より正確に判断しやすくなります。
そのうえで、3,000万円の特別控除を使った場合、軽減税率まで併用した場合、買換えの特例を選んだ場合など、複数のパターンを比較するとよいでしょう。特に買換えの特例は課税の「免除」ではなく「繰り延べ」であるため、目先の税額だけでなく、将来その住宅を売るときの影響まで考えることが大切です。
また、特例には所有期間、居住実態、売却相手、過去に別の特例を利用していないかなど細かな適用条件があります。確定申告が必要になる制度も多く、申告後に別の特例へ簡単に選び直せないケースもあります。不動産売却と住み替えを同じ時期に予定している場合は、売買契約を進める前から特例の組み合わせを確認しておくと安心です。判断が難しい場合は、税務署や税理士などの専門家に確認し、自分の条件に合った制度を選びましょう。
